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ここ箱根湯本の宿はどこもきらびやかなつくりをしている。店にはそれぞれ美人店員が2~3人ずついて、名物の木工製品を売っている。これは江戸より昔から続く名物の挽物細工で、後には箱根寄木細工として有名になっている。
店員「いらっしゃいませー。お土産に挽物細工はいかがですかぁー」
弥次「おねえさん、そこのお椀を見せてくれるか」
店員「はーい、お持ちしま、あっ、いらっしゃいませー」
他の客のところへ行ってしまった。そこへすかさず店の婆さんがササッと駆けつけ、
婆さん「はいはい、こちらでございますかの」
弥次「(婆さんを呼んだんじゃないよ?) いや、それじゃねえ。おねえさーん、そっちの盆を見せてくれ」
また婆さんがササッと駆けつけ、
婆さん「はいはい、こちらですかな」
弥次「ちがーう!(ババアてめえじゃねえよぉお?) おねえさーーーん、その手に持ってる物はなんですかぁー?」
店員「はい、こちらはお煙草入れでございます」
弥次「そう、それ。それだよ。いくらするの?」
店員「こちらは3500円です」
弥次「うーん、ちょっと高いな。1500円にしてくれよ」
店員「え、それはご勘弁ください。こちらはとても良い品物なんですよ?」
おねえさんが困ったような顔つきで見つめるので弥次はキュンとなり、
弥次「じゃあ2800円でどうだ」
店員「それも困りますぅ」
うるんだ瞳で弥次を見つめる。
弥次「じゃ3500円」
店員「あと少しお願いしますぅ」
弥次「よし、じゃあ5000円出そう。これでどうだ」
店員「わぁっ、ありがとうございます」
弥次「よし、もってけ」
ポンと5000円を渡して店を出た。
弥次「じゃあね、おねーさん」
満足気な弥次に、喜多が呆れる。
喜多「3500円の品物を5000円で売るとは新しい商売だな」