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小田原宿では客引きが早くも宿場の入口で待ち構えていた。
客引「お客様、小田原でお泊りですか。どうぞ私共の宿へおいでください」
弥次「小清水か白子屋に泊まろうと思ってるんだが」
客引「今日はどちらもすでにいっぱいですよ」
弥次「お前んとこの宿はきれいなのか」
客引「はい、先日建て直したばかりの新築でございます」
弥次「座敷はいくつあるんだ」
客引「十畳と八畳と、あとお店が六畳です」
弥次「風呂は?」
客引「4つあります」
弥次「相手をしてくれる女はいるのか」
客引「はい、三名おります」
弥次「かわいいのか?」
客引「そりゃもう。綺麗どころばかりを取り揃えております」
弥次「あなたは宿のご主人か」
客引「さようでございます」
弥次「女将さんはいらっしゃるのか」
客引「はい、おります」
弥次「宗旨はなんだい」
客引「浄土宗です」
弥次「寺は近所かい」
客引「いえ、遠方でございます」
弥次「葬式は何時からだ」
客引「は?」
喜多「いったい何の会話だ?」
弥次「さあ」
自分でもよくわからなくなったようで、そそくさとかわして立ち去る。