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散々な目に遭って歩き続けると、やがて藤沢宿の入口にたどり着き、ちょっと怪しげな古い茶店で休憩を取ることにした。
二人が道中の砂埃をはたいてタバコを吸っていると、合羽を着て風呂敷を背負った、人のよさそうなおじさんが二人の前に立ち止まった。
おじさん「すみません、ちょっと教えてください。ここから江の島へはどう行ったらいいでしょう」
喜多「おじさん、旅行ですか?」
おじさん「はい、多摩の羽村からやってきました」
弥次「江の島は初めてですか」
おじさん「ええ、里は長崎で、こちらへ出てきてから江の島へはまだ行ったことがないのですよ」
弥次「そうですか。それならここをまっすぐに行って、遊行様の前に橋があります。で、そこを」
喜多「そう、橋といえばさ、確かその橋の向こうだっけ、すごくきれいな奥さんがやってる茶店を兼ねてる宿があるよな」
弥次「それそれ。去年俺が相模の大山に行ったときに泊まったとこだ。あの奥さん、江戸の出身らしいぞ」
喜多「そうなのか、どうりであか抜けてると思った」
おじさん「あのー、すみません、その橋からどう行きます?」