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現代語訳 旅行用心集 @yajikita_douchu

 

さて藤沢の宿では、立ち並ぶ茶屋の店先で店員たちが客を取ろうと、大きな声で呼び込みをしている。

 

店員「いらっしゃいませー。どうぞお休みくださーい。酔わない酒もございまーす。バリバリする炊きたてご飯もございまーす。いらっしゃいませー」

茶屋だけではなく、駕籠かきや馬方も客を取ろうと一生懸命だ。

 

馬方「お客さん、生きた馬はいかがですかー。お安くしますよ。元気過ぎて跳ね回ること請け合いですよー」

駕籠「駕籠はいかがですかー。戻り駕籠です。お安くしますよー」

弥次「少し乗って行くか。おい、駕籠はいくらだ」

駕籠「4300円です」

弥次「うーん、高いな。1800円なら俺が担ぐよ」

駕籠「いいっすよ。1800円にしましょ」

弥次「よし、じゃあ乗るから草鞋をそこにくくってくれ」

駕籠「え、乗るのか?担ぐって言ったじゃないか」

弥次「はは、ウソだよ。じゃあ2500円でどうだ」

駕籠「安いがまあいいでしょ。おーい相方、2500円だがいいかー。さ、お乗りください」

値段の折り合いがついて、弥次は駕籠に乗った。

 

駕籠前「相方ぁ、この旦那は乗り方がぎこちないな」

駕籠後「お客さん、駕籠に乗り慣れてないんですねぇ。もう少しリラックスしてください」

 

弥次「お、おう…」